さて、私が修士号を持つ分野はSpeech Communication、すなわち、雄弁術をあらゆる角度から検証、学び、そし活用する学問です。とは言え、人の心を動かすスピーチを創り出す作業はとてつもなく骨が折れるのです。修士号を持っていても、納得のゆく一作を過去に書けたことがあるのか未だ自問自答が続いているくらいに。それほどに奥深く難しいのが、海外におけるエッセイであり、日本の小論文とは似て異なるもの。
誰もが一度は聞いたことのある哲学者アリストテレスの雄弁術は、説得力のある論理的な議論を構築するための技術です。この雄弁術は、証拠や論理的な推論を用いて聞き手を説得するための手法を体系化したものです。
アメリカの大学で提出する願書エッセイは、この雄弁術を基に構築されます。日本の小論文と異なり、単なる意見の述べ方や知識の展示だけでなく、自己表現や将来の目標を論理的かつ説得力を持って提示することが求められます。
日本の小論文と異なる点は、主張を裏付けるための具体的な事例やデータの引用、論理的な展開、そして感情や説得力の要素を組み合わせた構成が挙げられます。一方、願書エッセイは個人の経験や価値観を論理的に説明し、大学に入学する意義や貢献を明確に示すことが重要です。
なぜ雄弁術を使った願書エッセイが大学入試において重要なのかという点では、大学はただの知識の蓄積ではなく、学生が自らの考えを明確にし、他者を説得できる能力を持っていることを求めています。願書エッセイを通じて、志願者が自らの強みや志向を明確に示し、大学での学びや将来の目標を論理的に説明することで、入学の選考において有利になるのです。
第一に、大学教育は単なる知識の習得だけでなく、批判的思考や問題解決能力を養うことを目的としています。自らの考えを明確に表現し、他者を説得する能力は、学問的な議論や複雑な問題に対処するための基本的なスキルです。これにより、学生は自分の意見を構築し、他の視点を理解しながら議論を深めることができます。
第二に、卒業後実社会の成功においても、コミュニケーション能力や説得力は重要な要素です。大学では、学生がこれらの能力を磨く機会を提供し、実践させることで、将来のリーダーシップやチームワークにおいても活躍できるようにサポートしています。
さらに、多様性のある社会で生きるためには、他者との意見の交換や説得が不可欠です。大学は学生が異なる背景や価値観を持つ人々と対話し、協力して成長できる環境を提供しています。自己の考えを明確にし、他者を説得できる能力を持つことは、社会的な対話と共生においても重要な役割を果たします。
ですから、アメリカの大学は学生に対し、自己の考えを形成し、他者を説得する能力を求めることで、学問的な深さと社会的な責任を両立させる準備を促しているのです。
これが、私がインスタやブログで口酸っぱく願書エッセイの重要性を説く理由です。自己PRや自己紹介の延長と捉えてしまうミスにより、志望校への入学が叶わなかった!という事態にならない為、留学準備には最重要課題としてエッセイスキルアップを念頭に置いてください。