英文エッセイについて学んできたけど実際はどんなエッセイがあるの?どんなエッセイが合格に至ってるの?という疑問にお答えする今回。第一弾はノースウェスタン大学に合格した生徒のエッセイをお届けします。
エッセイ課題:
Some students have a background, identity, interest, or talent that is so meaningful they believe their application would be incomplete without it. If this sounds like you, then please share your story. (250-650 words)
私はその小さな手を伸ばし、ガラス越しにプニプニの頬を窓に押し付け外を眺めていた。シャツを引っ張り席に座るように促すその大きな手を感じながらも、当時10歳の私は生憎、行儀や衛生という概念を持っていなかった。よって、CTA電車の席に靴のまま立っても平気だった。あの瞬間、自分にとり一大事だったのは、シカゴ上空を飛んでいるかのような感覚を味わうことだった。刻々と変わる景色を見つめ、何1つ見逃すのも勿体無いと感じたものだ。
私は、シカゴ市民に「L」と呼ばれ親しまれている巨大な銀色の獣の腹の中にいた。Lを他都市の地下鉄(Tube、le Métro、MTA)と比較できない唯一無二の存在にするもの – それは、コンクリートとアスファルトのジャングルを木材と鋼のレール上で潜り抜け、シカゴの街を象徴する高層ビル群を走る景色だ。乗客はその景色に無限の驚きを持つ。夢見るような趣で、外の世界を眺めている生真面目そうなビジネスマン。車両の真ん中に立ちバランス取りゲームに夢中になる子供たち。人生初めての乗車から現在まで『乗客とL内外の世界を繋げる関係性』に魅了され続け、その探究心はいつしか情熱へと変わっていった。
Lへの乗車は、日常生活で見落としてきた出来事や、ありふれた毎日を見つめ直す時間を与えてくれる。ドアから流れる人々の数を数えることはできるが、彼らそれぞれの人生を数値化することはできるのか? あの女性、男性、学生、小さなネズミは何者で、彼らの物語は何なのか? 私はジャーナリスト、経済学者、マーケター、社会学者、歴史家、単なる同乗者になったつもりで、様々な事柄を分析した。Planet Fitnessの広告がPizza Hutの広告の隣に配置されている意図、電車が北から南に向かうにつれて乗客の人種構成がどのように変化するか、座席のさりげないシミや落ちていた本の出所などだ。蝶の羽ばたきが世界の反対側でハリケーンを引き起こすと言われているなら、5分の電車の遅延は私を大学に入学させることができるのだろうか?なんていう自問自答もしていた。
「L」は私の探究心と可視化し難い外の世界との触媒であり、私を冒険へと誘う、75セントで乗れる銀色の戦車なのだ。初めての乗車以来、人間観察に最適な駅リストや、人生経験から形作られたシカゴの『メンタルマップ』作りを続けている。乗車カードをピピッとするだけでいつでもアクセス可能だ。Lの「ループ」から多様に枝分かれする路線上に、私の人生の様々な経験が点在している。そこには、声が枯れるまで友人達と笑い練習に勤しんだボートハウス、政治的志向・社会経済の研究・ジャーナリズムを学んだ学校、プロジェクトで参加した小さな都市農場をも、そのマップ上にある。
私は、これまでも、これからも知識と好奇心に満ち溢れ、そして飢えている。生き生きと鼓動するその電車は、中心地から郊外までどこまでも、私のワクワクを運んでくれるのだ。Lに乗ればいつだって、新しい発見の機会を与えてくれ、リベラルな教育やボランティア精神を培う機会も与えてくれた。心の奥底から湧き出る冒険心、ジャーナリズム・学生政府・ファッション・街を愛する心、その全てはLを通して築き上げられたものだ。Lの乗車は、いつでも好奇心を持って生きること、人生を最大限に体験しスポンジのように知識を吸収したいという情熱を育んでくれた。発見というものはいつでもこの上ない喜びだ。そして、それが私の存在意義なのだ。
ポイントの解説
- “sanitary-awareness”のようにユーモアを交えているところが、フックにもなるし、書き手の人物像も表現できて良い
- “銀色の獣”の表現にクリエティビティーも感じ、電車をLと愛称で呼ぶことで読み手をエッセイに引き込む技になっている
- 単に”真面目そうなビジネスマン”とする代わりに、”生真面目そうな”とすることで、ポジティブな意味で穿った捉え方をするユーモアのセンスがうかがえる
- Lが、探究心を刺激する機会を与えてくれる生き物と捉える比喩になっていて良い
- コチラも同じくユーモアがある文章になっている。また、バタフライ効果をつかった例えにすることで書き手の知識知性も表現している
- Lが書き手にとってどういった存在はを表現する良い比喩
- Lを自身の活動と自然と結びつける手法
- Lと書き手の信念や個人像の結び付けになり、スマートで見事なまとめになっている
総合的に、このエッセイは非常に良く書かれていています。緻密に計算されアイディアや個性に富んだ表現に溢れた一作です。文章スタイルは創造的・魅力的で、他のエッセイとは異なり審査員に強い印象を残すでしょう!