まず一言でまとめると、この仕事に向いている人、「石橋を叩きすぎてから渡る」の一択につきます。遥々海外からやってきて限られた日数で撮影をこなす、且つ基本取り直しの時間もないとなると、綿密なスケジュールを組み立て、ありとあらゆる想定外の事態も考慮してバックアッププランを用意しておく。小心者の私には毛が抜けるような仕事です。
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香盤表
撮影中一番のお友達はこの香盤表です。舞台、映画などこの業界で欠かせない、その日のスケジュール表です。出演者、タイムスケジュール、必須小道具などなど、潤滑に撮影を進める為のシートで、アメリカではCall Sheetと呼ばれています。
語源は香道からきており、お香を立てる盤です。香の長さで時間を計ることができ、また、歌舞伎の出番表に姿が似ていたこともありいつしか進行表のような意味で使われ始めたという説もあります。
こちらはアメリカで使用されるコールシートの例。色々なコールシートがありますが、基本のフォーマットはさほど変わらず、日本同様に進行、出演者、小道具などの情報が載っています。
香盤表用語
私が自分とクルー用に作るコールシートです。アメリカ側のコールシートは前日の夜、もしくは当日撮影開始直前（下手したら無いｗ）に配布されることが多いので、最低1か月前には自分のコールシートを作成して、すべて予定通りにゆく構成なのかの確認を含めスケジュールを組み立てていきます。
上記コールシートの補足で用語の説明をしますね。
- Call Time
集合時間。 - ESU
Equipment Set Upの略で機材セッティングの意味。 - B-roll
ストーリーの軸となる映像はAロールと呼ばれ、その他がBロールです。例えば、インタビューを撮影する際はインタビュー自体がAロール、そのインタビューにまつわる保続の映像（景色など）がBロールとなります。 - Wrap
撮影終了 - Dark Day
撮休、すなわ撮影お休みの日。
スケジュールを組む際一番気を付けているのが時間配分です。機材の量、撮影隊の人数、天候、ロケバスが待機する場所を確認したら、機材をロケバスに詰め込み出発まで何分必要か計算。その後、移動時間帯の込み具合も含め次のロケ地までの移動時間をグーグルで割り出します。そうやって細かく時間配分した後、アメリカが出したスケジュールと照らし合わせ一日で希望撮影内容すべて網羅することができるのかの最終確認。
スケジュール作成の注意点
ここで注意すべきはアメリカの業界における12時間ルール。撮影時間のマックスは一日12時間までと定められており、且つ、撮影後から次の開始時間までは最低8時間の休息時間が必要です。
「次の日この時間から撮影始めたいけど8時間開いてないから無理だし別日に移動か….」
と頭を悩ませる事も多々。ガチガチのスケジュールだからなるべく詰め込んで長時間労働になってもいいか！とい概念はありません！サビ残なんて言葉もありません！正直スケジュール組む上でこれしんどい足かせになる事もあるんですが、破ってしまうとアウトなんですよね。ただ、日本での映像制作現場ってブラック極まりないという印象が強いので、ここまでしっかりと組合に守られているアメリカ素敵だと思います。
さて、コールシートには記載されていない最重要事項、そして撮影隊の気分をも左右する事はなんでしょうか。
「Crafty」
クラフティ―。なんだそれ？クラフト？答えはおやつです。食事とは別にロケバスに詰め込むおやつです。皆さん移動時間が長くなりがちなので道中車内で食べるおやつに命かけている方多いんです。一度ピザ味おやつが流行りまして。アメリカ人といえばピザ！ですが、あちらのお菓子でピザ味ってあまり見かけません。以前ピザ味のスナック菓子をクラフティーの籠に入れておいたら皆さんそれに夢中になりまして。しばらくコンビニやスーパーで兎に角ピザ味菓子をかき集めました！その他にもアレルギー対策、甘いの、しょっぱいの、フルーツ、ドリンク類と軽く数日生き延びれる量のお菓子を毎日準備するのも重要な仕事です。
過酷な撮影の中、おやつって一息いれる大切な時間ですよね。以前、凍えるような気温の山頂で数時間撮影した際には、なんとフィールドプロデューサーが山の麓のコンビニで全員ぶんのホットコーヒー（缶じゃなくて！）を買って、それを持ちながら登山して差し入れをしてくれたことがありました。クルーの為に休憩の楽しみを作ってくれる努力に感動でした（勿論完全に冷めてましたけど）。
今回はコールシートについてお届けしました。次回をお楽しみに 🙂
